感想
- 未散ソノオを読もう! ときめたとき、信頼できるBL読みのお友だちが「ちはるさんお好きですよ」とこの作品の主人公を勧めてくれた思い出。初読のときは「大変好きでした ただ一番はこの弟くんの方が……」という感じだったのだけど、なんと再読したら、もうどっぷりこの主人公に惚れてしまいましたとさ。めでたし、めでたし。持つべきものは性癖を知られ尽くしたBL友達である、というお話。
- いやでもこの弟くんも大好きなので、もっとこの弟くんも欲しいですよ……!
- 実際この主人公、というか主人公たちは本当に見事で、捨てるも地獄だし、抱えたままでいることもまた地獄なわけで、その中をただ生き延びたことだけでもう尊敬に値するのよ。
- 主人公があの環境のなかで、クズではあったが悪ではなかったことに驚くよ。八雲さんには本当に感謝したほうがいい。悪にならず生き延びられたとか、こういうものは、本人の努力だけでなく最後には運が必要で、その運の存在が八雲さんなのである。『おまえでダメならもうダメだ』も参照のこと。
- スカーレット・ベリ子作品の「強さ」が好きな人には,同じ響きが感じられるかもしれない。こちらはあちらより少し潤いがあってやわこいが、厳しさはレベルを同じくしていて、シビアかつ公平で、誠意と深い敬意がある。「強さ」への言及、根源的な意味で使われているしな。
- 内弟子くんかわいい。あの子どもも、もっと愛されてほしい。愛されていると伝わってほしい。家族のそれは、生まれ落ちた場所だけでしか得られないわけではないということ。
- あとあの、しずかちゃんがしずかちゃんと呼ばれているのが本当に胸を打つんよ……。
- ところで「あまりプロらしくないヒモ」が出てきた『よきヒモとよき飼い主』を読んだのが未散ソノオ作品に触れたきっかけだったのだが、あちらと比べると、こちらのヒモは本当に職業ヒモとして熟練のプロだったのであろうなと思いました。
- 『僕のミーちゃん』でも先輩のこととして書いているのだが、先輩や、今作ではヤトくんとかそういう、常であればスポットライトが当たることなく、語られることもなく、抱えきれない大きなつかえがわずかも解かれることなく放置されていただろうキャラの立場と心情が語られるというのは、これは「包括」なのよな。きょうだいじとかヤングケアラーとか、そういう、見向きもされてこなかった存在を、ちゃんと見てますよ無視しませんよ、という姿勢。
どうしようもない僕の運命の恋 (Charaコミックス)